ニュースの概要
メガソーラービジネス plus(日経BP)が、タイの太陽光発電所をドローンで点検した調査の続報を伝えた。今回の焦点は、パネルの中で電気の通り道が一部まとまって働かなくなる「クラスタ故障」である。赤外線カメラで撮影すると、故障した部分は周囲より熱を持って見える。調査では、この故障の出方が日本の発電所とタイの発電所とで顕著に違っていたという。同じパネルでも、置かれた気候や施工、運用の条件が違えば、壊れ方の傾向が変わるということを示す内容である。日本の保守担当者にとっても、自社の発電所を点検する際の見方を見直すきっかけになりうる。
引用元: タイの太陽光ドローン点検・続報:「パネルのクラスタ故障に日タイで顕著な差」 - トラブル - メガソーラービジネス plus(日経BP)
分析・見解
クラスタ故障とは何か、なぜ熱で見つかるのか
太陽光パネルの中では、小さな発電セルが何十枚も直列につながっている。そのセルを数十枚ずつ束ねたものがクラスタである。束の一部が壊れると、その束だけ電気をうまく流せなくなる。行き場を失った電気は熱に変わり、その部分だけ周囲より高温になる。
ドローンに積んだ赤外線カメラは、この温度差を空から一度に撮影できる。人が歩いてパネルを一枚ずつ測る方法に比べ、数十倍の面積を短時間で調べられる。点検の費用が下がったことで、故障の傾向を国ごとに比べるという分析が現実的になった。
日本とタイで差が出る理由を、三つに分けて考える
差が出る原因は、一つに決めつけられない。考えられる要因は主に三つある。
一つ目は気候である。タイは年間を通じて気温が高く、スコールのように急に冷える雨も多い。パネルは昼間に熱で膨らみ、夕方に急に縮む。この繰り返しがセルのつなぎ目に負担をかける。日本は雪や台風の荷重が目立つ一方、気温の変化の型が違う。
二つ目は施工と部材である。配線を固定するバンドの質、端子の締め付け具合、パネルの輸送や据え付けでの割れの有無などが、数年後の故障率に響く。三つ目は運用である。草刈りの頻度や、故障を見つけてから交換するまでの速さが、見つかる故障の数を左右する。
差を「優劣」と読むと判断を誤る
注意したいのは、この比較を国の優劣として読まないことである。たとえば日本のほうが故障が少なく見えても、点検の頻度が低くて見つかっていないだけかもしれない。逆にタイのほうが多く見えても、調査対象が設置から年数の経った発電所に偏っていれば、単純には比べられない。
比較するなら、設置後の年数、パネルの製造元、設置方式をそろえた上で、故障の割合を見る必要がある。今回の調査が続報として積み上がっていること自体に価値がある。一度きりの点検では、偶然の偏りと本当の傾向を区別できないからだ。
点検が「年一回の儀式」から「継続的なデータ」へ変わる
国内でも、ドローン点検は一回撮って報告書にまとめて終わり、という使われ方がまだ多い。しかし今回のように故障の出方を地域や条件ごとに比べるには、同じ条件で繰り返し撮り、同じ形式で記録することが前提になる。
今後は、撮影した熱画像を人工知能で自動判定し、故障の種類ごとに分けて蓄積する流れが強まる。蓄積が進めば、どの製造元のどの型番が、どの気候で壊れやすいかを、保守契約や調達の判断に使えるようになる。点検は費用ではなく、将来の損失を減らす情報投資という位置づけに変わっていく。
ビジネスへの影響
発電所の保有者が今すぐ見直したい三つの点
まず、自社の点検報告書に、故障の「場所」と「種類」が分けて書かれているかを確認したい。クラスタ故障と、単なる汚れによる温度むらとでは、対処も費用もまったく違う。報告書が「異常あり」とだけ書いているなら、委託先に記載項目の見直しを求めるべきである。
次に、点検の時期と条件をそろえる。日射が弱い日に撮ると、故障が目立たず見逃す。毎回、晴れた正午前後に撮ると決めるだけで、年ごとの比較ができるようになる。さらに、海外に発電所や投資を持つ事業者は、現地の気候に合わせた点検頻度を別に設計したほうがよい。日本の基準をそのまま持ち込むと、見落としや過剰な点検の両方が起きる。
保守契約と調達で、データを交渉材料にする
故障の傾向が数字で見えれば、パネルの製造元への保証請求や、保守会社との契約交渉で根拠が持てる。「同型番で三年以内に故障が集中している」という記録は、口頭の訴えよりはるかに強い。
点検の発注側は、画像データそのものを受け取る契約にしておくことが大切だ。報告書だけだと、委託先を変えたときに過去の比較ができなくなる。画像と位置情報を自社で持てば、別の事業者に移っても連続したデータとして使える。ドローン点検は撮影技術の差より、データの持ち方の差で成果が分かれる分野になりつつある。